十六日目 フィレンツェ④

※今回は文字ばかりです。

 

十六日目 この日は朝の9時からアッカデミアで卒業される日本人の方の卒業発表の見学に行った。

昨日の夜のワインはしっかりと次の日に響いていて、めちゃくちゃ体がだるい二日酔い状態だった

9時前には着いて、受付で教室名を言ってどこにあるか聞くが、いまいち聞き取れずうろうろしてると日本人っぽい人がいたので尋ねると、その方も同じ卒業発表に行くということで着いていった。

日本の芸大では、卒業制作を作って終わりなのだが、こちらでは先生数人の前で卒業制作についてプレゼンをして質疑応答したり、さらに卒業論文も提出しなければらないようだ。

教室に着くと、今日ここで卒業発表する二人分の作品が展示されていた。特に、先に発表するイタリア人はなんだかとっても奇抜なドレスを着て、キラキラのデコシールをあっちこっちに貼った作品を展示していた。

日本人の方の卒業発表にはアッカデミアに通う日本人女性3人が駆けつけていて(教室に案内してくれた人もアッカデミア生)、その方たちともいろいろとお話をさせてもらった。

9時はとっくに過ぎたのだが、発表者は準備やらなんやらでバタバタしている上に、先生は一向に現れない。(奇抜なドレスを着てる子はお父さんが付きっきりで展示の準備をしていて、色とりどりの風船をお父さんが頑張って膨らませていたのがなんだかおもしろかった。)

1時間ぐらい過ぎたらちらほら先生らしき人が現れて、卒業発表がゆっくりと始まった。

審査だからまじめな雰囲気だろうと思っていたら、結構ラフな感じで先生たちはおのおのうろうろして展示を見て、パラパラっと論文を見て、ちょこっと話して、その場で点数計算が行われるということで、先生達以外はその教室を締め出された。

しばらく廊下でみんなで待っていると、終わったよ~ということで中に入り、その場で点数と卒業できるかどうかが言い渡された。一人めの奇抜なドレスの子は満点で、卒業を言い渡されて喜びながらどこかへお父さんと消えていった。

(簡単そうにみえるが卒業することは難しく、日本人の方も本来2年のコースを5年目にして今日に至るらしく、卒業せずに辞めていく学生も多いらしいので、これは大変貴重な機会だった。あまり面識もないのに本当に呼んでくださってありがとうございました…)

二人目は、日本人の知り合いの方で、映像作品だった。しっかりと教室の中に小さな小屋を作り、その中で三画面投影して上映されていた。(この準備もとても大変そうだった)

こちらもラフな感じで、先生は小屋を覗いて雑談し、結構早めに点数計算へ。

またしばらく廊下で待ち、結果発表では、ほぼ満点の点数で卒業をされた!

皆でおめでとうございます~と喜び、シャンパンを開けようということになって中庭でわいわい。他にも卒業した人が中庭に集まっていて、とてもめでたい空気だった。

こちらでは卒業の時に月桂樹の葉っぱで作った冠を被ることになっていて、卒業者はみんな自前で用意した月桂冠を被っていた。

その葉っぱを一つもぎると、次その人が無事に卒業できる、というおまじないがあるようで、私も一つもぎらせてもらった。

そのあとお昼ごはんを食べに行かないか、と誘ってもらい、一緒に近くの中華料理屋さんへ。なんだか何日かぶりの豪勢な食事をしながら、アッカデミアの話などを聞いたら

単科コースは聞いたことがない。単位を取得しないスクオーラリベラヌードという毎週ひたすらヌードデッサンをするコースなら知ってるけど…ということだった。

こっちの事務局はいい加減で、筑波大から交換留学で来た子たちも、事務局に「そんなん聞いてないわよ、なにそれ?」と言われて困っていたそう。

もし、授業自由選択性の単位コースが本当にあるなら前例がないから、しっかり問い合わせて事務局に通いつめてアピールしないと存在を忘れられるよ、と教えてもらった。

さらに、フィレンツェのアッカデミアには古典技法に詳しい先生はいないよ~と一刀両断されてしまった。

どうもイタリア中で古典技法を現代の絵画に応用する風潮が少なく、そういった古い絵画に関することはすべてレスタウロ(絵画修復)の分野に丸投げされているらしい。

全体的に絵画はコンテンポラリーの波に乗っていて、古い絵画から新しい絵画を、なんて考え方は全く無い様だった。

国立大学で学べないので、私立の観光客のバケーション用のテンペラやフレスコに関するスクールにイタリア人が通っている状態だと。

これを聞いた時はとてもショックだった…フィレンツェには豊かな歴史が残されているのに、それを保存し、修復する。ということだけで切り離されているのか。なぜ次の時代のためにその歴史の延長線上として応用しないのか。

新しいアートなんてものは今までに一切なかったものだと思われているかもしれないが、全く新しいものなんてあり得ないとおもう。

古いものや現代の時代性をミックスさせて化学反応を起こした複雑な応用が新しいものとして理解されていることが多いのに…

そんな、ショックを受けながらも和やかに食事が終わった。お金をもちろん出そうとしたのだが、卒業した方のお母さまがご飯代を奢ってくださってなんだか申し訳なくなった。

その後、初めに案内してくれた日本人の方が一緒にお茶でも行きませんか、と誘ってくださって、フィレンツェでおすすめのカフェや革屋さんとかを教えてもらいながらカフェで雑談した。。その方はアッカデミアのToriennio(3年間コース日本の大学でいう学部)をこないだ卒業して、来週にはBiennio(2年間コース日本でいう修士課程)を受験するそう。

彫刻を専攻されていて、院では新しく新設されたコースを受験しようと思ってずっと準備してきたそうなのだが、今日卒業発表に来ていた院で担当になるであろう先生に質問すると、人数が集まらなかったらコースは開催されないよ~と言われてしまって愕然とした様子だった。

アッカデミアはとてもいい加減で情報が前日になっても掲示されない、とかがよくあるらしい。

アッカデミアの彫刻はアカデミックな古典コースとコンテンポラリーコースか選べるようで、基本的な塑像などからインスタレーションまで幅広く勉強することが出来るということだった。

専攻によっても全く教育方針は違って、彫刻の話を聞くととてもよい学びの環境だな、と感じることが多かった。

具体的な留学に関するHowtoについても聞いた。私は入学する前に一年間イタリアで語学学校に通ったけれど、それでも面接試験などはきつい、とか、フィレンツェのアッカデミアだけ留学生は奨学金が降りるから1年の学費は500€(6万ほど)で済む、ペルメッソ(滞在許可書)やその他受験手続は5年こちらに住んでても一人で厳しいから、語学学校に手伝ってもらった方が絶対良いとか、いろいろなことを親切に教えてくださった。

そんなこんなでお別れし、その日は宿へ。

この日はいろいろと衝撃を受けた。アッカデミア自体学費が安く入学もしやすいために、絵画を学ぶというよりこれがイタリア滞在のビザ発行するための場所として重点を置かれて使われている側面があること。(それは大学という環境としてとってもよくない。)

特に絵画に関しては風潮が思っていたこととは大きく違う、すべては振り出しにもどる、ということなのか…

とりあえずとても大きな収穫だった。イタリアに来たかいがある。でも…うーん、みたいなことを繰り返し考えていた。

おじさんや爺さんを相手する気持ちにならなかったので、とにかく人目を避けて共有部分のソファや椅子を転々とし、こそこそとしていた。

そして、部屋に帰ったら幸運なことに誰もいなかったので即寝た